「薫りたつ本物の家」


 時がたてば弱っていく家と、時がたつほど強くなる家がある。違いは、「素材」を使うのか、素材に見せかけた「材料」を使うのかだと考えている。素材とは、本物のこと。本物とは無垢材。無垢材は時を積み重ねるほどに、重厚な威厳を身にまとう。 重圧な威厳を持つ無垢材で作られた家は、住む人に大いなる自然のエネルギーを与え続けると信じている。
 家をモノだとは考えていない。呼吸をすることで、いつまでも生き続ける家を提供している。 だから、家に寿命があるとは思わない。寿命とは、材料の耐久性を示した言葉にすぎない。愛着を持って住み続ける限り、たとえ主人が亡くなっても、家は次の世代にエネルギーを引き継いでくれる。
 大学の建築学科を卒業して以来、一貫して建築の道を歩んできた。 流行の最先端と言われるスタイリッシュな建築にたずさわったこともある。美しく彩られた建築CGパースを使いながらの打ち合わせには、時代の一部を動かしているという自負もあった。 しかし、流行を引っ張っていたはずのデザインは、次の流行に押されてしまい、数年で新しいデザインへと変容していく。 時代を引っ張っていたはずの仕事は、いつの間にか時代に引っ張られてしまっていた。最初から一定期間の役目しかない建築には、本物は使えない。大理石に似せた材料、無垢材に似せた材料としての壁紙を貼りながら、「このままでいいのだろうか?」と自問していた。
 流行に左右されない建築。 行き着いたのは、住宅だった。
 家族が育ち、巣立つ。そして、最期には戻ってくる場所。家族と一緒に生きる家。風がとおり、呼吸をしながら、薫りを運ぶ。本物がかもし出す薫りは、人の心を感化する。そして、家は家族に癒しとエネルギーを与えるパワースポットになる。
 日本には、日本に合った家作りがある。日本の素材を使い、日本の気候に合わせ、地震にも配慮した設計がある。 使用する素材は、杉、ヒノキ、サワラなどの針葉樹。植えてから素材になるまでの期間、約50年。積み重なった歳月が、強く生きる家となる。
 夢は、天然の素材を使い、日本に合った家を一棟でも多く建築すること。そのためには、家が手の届かない高価なものであってはならない。 だから、コストの管理は入念に行う。建築士の仕事は、家を設計することだけではない。家に住む家族の幸せを考えること、そして家族に愛される家を建築することだと思う。
 

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A様邸
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